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しっぽたちのゆくえ番外編 ep1 

 ドン・カバリアの最高傑作、バーチャルゲーム「トリックスター」の舞台。
カバリア島。
 そこに残された莫大な遺産が目的で、世界中から冒険者が集まり、ゲーム参加者には一般的な参加者にまぎれてアイドル、本物の魔法使い、料理人、劇団員、さらに貴族とか暗殺者とか王族だとかも参加しているらしい。

 そんな島だが、一方、未だに不明な謎がかなり多い島としても知られている。
 大して広くもない島に熱帯樹林だの永久凍土だのが混在し、4年前に発見された無人島と世間には発表されているはずなのに島には古くからの伝説や15年前の事件が記憶として残っているのだ。
 そんな不可解な現象に対する専門家の意見もさまざまである。カバリア島というのは実はテーマパークではなくなんらかの超越的な力を持った地域であり、各地域をつないでいるワープポータルによって場所や時間を越えて移動させられているんだ、と、いうような類のものから、実は地域の気候や建造物や住人やモンスターなどは全てゲームのプログラムであって、冒険者は島に来た時点でゲームプログラムに変換されてしまっているのだ…という説まである。
 この島がどのような状態で発見されたのか、このテーマパークをどのようにして作ったのか。どこまでがゲームの要素でどこまで現実をのこしているのか。それを全て知っていたただ一人の人物、ドン・カバリアはもうこの世の人ではない。


 そんな「わけのわからない島」の噂を聞いて、ちょっとした興味から遺産を探すつもりでもなく島に訪れる者も少なくない。



 

 カバリア島に着いて下ろされるコーラルビーチの奥へ進み、さらに洞窟を抜けるとマリンデザートに着く。海が近くにあることとオアシスが多く点在していることもあって昼と夜の寒暖差は大陸の砂漠ほどではないが、それでもデザートという名前の通りあたり一面に砂漠が広がるここには日中、太陽が激しく照りつける。
 その地域のあちらこちらにおいてある誰が設置したかもわからないパラソルの下で、一人の冒険者が足を休めていた。
 「…ぅー………」
 彼女は息をつくと、大きく伸びをする。その様子を見ると少し休憩しているだけで、疲れきっているという雰囲気はない。

 この冒険者も、遺産に興味があるわけでもなく、半分は観光のようなつもりで島に来た者の内の一人である。彼女は島に来る前からさまざまな国や地域をまわっていた。行く先で時折聞くカバリア島の噂。それらを聞いていくうちにだんだん気になって、参加に踏み切ったというわけだ。一人旅の経験が多いので、少しくらいの環境の変化や疲れくらいどうってことない。そのあたりはこの島の冒険に適していると言えるだろう。
 ……そんな彼女だが、さし当たっての問題が一つある。
 「…腹減ったなぁ…」
 テーマパークと聞いていたので食料調達はもう少し楽にできると思っていた。レストランはおろか、弁当もショップに見当たらない。モンスターも植物も食用に適していなさそうなものばかりで、釣竿に使えそうな枝も見当たらない。多少のサバイバル能力が必要な島だと知っていたらもう少し準備もできたのだが。
 そんなことを考えながらぼんやりと休憩していると、横から突然声をかけられた。
 「こんにちは、きつねさん♪」
 「狐?」
 ……ぁあ、そうだ。今はカバリア島の決まりで動物の格好をしているのだった。
 彼女に声をかけてきたのはこぢんまりとしていて、西洋の人形のような印象をうける少女だった。
 少々驚きはしたが、彼女は優しく返事をした。
 「私に何か用かい?お嬢ちゃん」
 「いえ、」 少女は『きつねさん』に小さな包みを渡す。
 「おなかがすいてるみたいでしたので、これお弁当です~♪」
 「えっ……?」
 どうやら先ほどの発言を聞かれていたようだ。それがわかった彼女は少し恥ずかしくなった。
 「気持ちは嬉しいけれども…お嬢ちゃんだって腹減るんじゃないか?」
 「私なら大丈夫です♪さっき喫茶店で食べちゃいましたから」
 「喫茶店?そんなものがあるのか…」
 その「喫茶店」というのが、冒険者がキャンプを使って有志で開店する交流場だと彼女が知るのは、もう少し後の話である。


 「へー…それじゃあカバリア島に来たばっかりなんですねー」
 「そう、だからあんまりわかんなくてな」
 彼女は最後に残った玉子焼きを一つ、口に運ぶと弁当の蓋を閉じた。
 「ごちそうさま。ありがとうな、おかげで助かった。」
 「いえいえー♪」
 そういいながら、少女は弁当箱をつかんでかばんに入れる。……小さくてきれいな手だ。とても過酷な生活をしているようには思えない。しかも、弁当を用意できるあたり、彼女はこの周辺に住んでいるのではないだろうか。
 「お嬢ちゃんはこの島の住民なのかい?」
 「? いえー、冒険者ですよー?」
 「それじゃあこの弁当はどうやって…」
 「あ、このお弁当はサナお姉ちゃんが作ってくれたんですよー♪」
 「い、いや。そうじゃなくてだな…」
 なんだかこの少女ははマイペースというか、どこかずれているようだ。まあ、そこまで気にすべきことでもあるまいと判断して彼女はそろそろ発つことにした。
 「それじゃあそろそろ私は行くよ。そのお姉さんにもお礼を伝えておいてくれないか」
 そう言って彼女は立ち上がった、が
 「あっ……待ってくださいっ」
 それを少女は引き止めた。
 「どうした?」
 「きつねさんって…今日どこに泊まるか決まってなかったりしますかー?」
 「決まってないが、どうしてそう思ったんだ?」
 「いえー……なんとなく、です♪」
 ……この子が鋭いのか、呆けているのか、だんだんわからなくなってきた。そう彼女が思っている間にも少女は話を続けた。
 「よろしかったら今日はうちに来ませんかー?」
 「うち…?家があるのか?」
 少女は「家」についての説明を始めた。
 野宿のみで島で何年と乗り切っているツワモノもいくらかいるが、島を冒険するときはだいたい、毎回短期間で帰ってたまに島に来るか、有料で貸し出されている家に住んで長期滞在するのが普通である。で、同じ家に数人で住んでいると銀行が共同で利用できたりして便利なので、家族や友人と一緒に家に暮らす冒険者が多いようだ。このまとまりはアカウント、と呼ばれていて(ゲーム用語を使っているのは、おそらくカバリア島自体がバーチャルゲームであるからだろう)この少女も他の冒険者と一緒の家で同一アカウントのキャラとして生活している。
 本人もあまりよくわかっていない部分があるらしく、曖昧な説明やいい間違いが多くて理解に少々時間がかかったが、だいたいこういうことらしい。
 「話は大体わかったけどな…いきなり行って一緒に住んでる人が迷惑しないか?」
 「きっと…大丈夫です♪何回かお友達呼んだりしてましたし、きっとおねえちゃんも喜んでくれますよ♪」
 まあ、彼女は他に今日の宿のあてもなかったので、ここは少女の厚意に素直に甘えることにした。見知らぬ誰かの家に泊めてもらうという経験は初めてではなかったし、同居人に断られても野宿して明日帰ればいい。
 「それじゃあ行きましょうっ。案内しますねきつねさん♪」
 「あ……ちょっと待った。」
 ここまで厄介になるというのに、いつまでも『きつねさん』で通すわけにもいかないだろう。
 「自己紹介がまだだったな。私はロコ=フォクシア、よろしくな、お嬢ちゃん。」
 「あ、私はジュエリー=モコです~。みんなにはエリーとか、モコとか呼んでもらってます♪」


 …彼女、ロコはこれがきっかけでエリーたちとともに生活し、長期的な滞在に切り替えることになろうとは、まだ知る由もない。

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